今回は愛知県長久手市のトヨタ博物館に展示されていたFerrari 512BB(フェラーリ 512BB)を紹介します。
Ferrari(フェラーリ)の歴史と実績

フェラーリは1947年にイタリアで創業した自動車メーカーです。
創業者のエンツォ・アンゼルモ・フェラーリは、アルファロメオ等のレーシングドライバーとして活躍した後、経営者としての頭角を現し、第二次世界大戦後の1947年に「フェラーリ」を設立しました。
フェラーリとして最初に製造した車両は、レーシングカー「125S」です。1シンダーあたりの容積(125cc)とSPORT(スポルト)から名付けられた「125S」は、ローマグランプリでいきなり優勝を果たすなど、その年のレースを12戦6勝と素晴らしい戦歴で終えました。
初期のフェラーリは、このように製造したレーシングカーでレースに参戦することで知名度を上げ、王族や富裕層向けに高性能なGTカーを少量生産・販売することで経営を安定化させていました。
フェラーリ初の一般向け自動車は、1953年に発表した「250」です。
4人乗りクーペボディのフロント部には、V型12気筒2,963ccが搭載されていました。
エンツォは当初から12気筒エンジンへのこだわりが強く、後に「12気筒以外のエンジンを積んだ車はフェラーリではない」とさえ言い放っています。
1950年代前半のフェラーリは、モータースポーツで得られた高い名声を武器に事業を拡大していきましたが、1950年代後半になるとモータースポーツへの過剰な投資や市販車の生産性の低さが経営に影響を及ぼすようになりました。
1956年にはエンツォの息子ディーノが筋ジストロフィーを患い、僅か24歳でこの世を去るというショッキングな出来事もありました。
1960年代初頭に更に経営が悪化したフェラーリは、ジウジアーロがデザインした小型スポーツカーを発売します。
フェラーリのブランドイメージを保つため、「ASA」ブランドで発売された廉価版フェラーリは、経営を立て直す使命を受けたものの販売は低迷。プロジェクトは失敗に終わりました。
1963年にはフォードによる買収計画が立ち上がりましたが、最終段階で決裂。この出来事に怒ったフォードが、ル・マン24時間レースでフェラーリを倒すべく開発した車両があの有名な「フォード・GT40」です。
「フォード・GT40」はその後改良を重ね、1966年のル・マン24時間レースでフェラーリに勝利しますが、目的達成のために約3年という長い年月を費やすことになりました。
1966年のル・マンで苦杯を喫したフェラーリでしたが、翌1967年にはフォードの地元アメリカで開催されたデイトナ24時間レースで優勝しリベンジを果たします。フォードへの当て付けに、翌1968年に発売した「365GTB/4」に「デイトナ」という呼称を付ける等、当時フェラーリとフォードはレース場以外でも戦いを繰り広げていました。
●12気筒シリーズ
1973年に「365GTB/4(デイトナ)」の後継モデルとして登場したのが「365GT4BB」です。デイトナはFR(フロントエンジン・リアドライブ)でしたが、「365GT4BB」は12気筒エンジンをミッドシップに搭載し最高速300kmオーバーを誇りました。
「365GT4BB」以降の12気筒エンジン搭載車は、MR(ミッドシップエンジン・リアドライブ)が主流となります。
1976年には「512BB」が登場。「512BB」は「365GT4BB」のマイナーチェンジ版で、外観にほぼ違いはありませんが、排気ガス規制の影響で低下したエンジンパワーを補うため、排気量が5リッター(4942cc)に拡大されました。
1984年には「512BB」の後継モデルとして「テスタロッサ」が登場。イタリア語で赤い頭を意味する「テスタロッサ」は、ボディ両側に設けられたスリット状の大型エアインテークが特徴的なGTカーでした。
1991年に「512TR」、1994年に「F512M」が登場しますが、12気筒を搭載したMRはここで途絶えることになります。
1996年に登場した「550マラネロ」は、「365GTB/4(デイトナ)」以来久々に12気筒エンジンをフロントに搭載するFR方式を採用。排気量5474ccから485馬力を発生し、最高速320km/hを誇りました。
12気筒FRシリーズは、その後「575Mマラネロ」「599GTBフィオラノ」「F12ベルリネッタ」「812スーパーファスト」と続いていきます。
●8気筒シリーズ
1960年代後半にはフィアットとの連携が始まり、初めて12気筒エンジン以外を搭載した車両が登場しました。
その車両はV型6気筒エンジンをミッドシップに搭載し、正真正銘フェラーリが開発したモデルでしたが、「12気筒以外のエンジンを積んだ車はフェラーリではない」というエンツォの意向でフェラーリとは名乗らず、亡くした長男の名前「ディーノ」を冠した「ディーノ・246GTS」として発売されました。
1975年には「ディーノ」後継モデルとしてV型8気筒エンジンを搭載した「208/308」が登場。親会社であるフィアットの意向もあり、この時点で「ディーノ」ブランドは廃止されました。
V型8気筒のMR(ミッドシップエンジン・リアドライブ)シリーズは、その後1985年に「328」が登場。「348」「F355」「360モデナ」「F430」「458イタリア」「488GTB」「F8トリブート」と続いていきます。
●スペシャルモデル
モータースポーツ活動を積極的に行っていたフェラーリは、レースへの参戦を目的としたホモロゲーションモデルや限定モデルを数多く製造。
「288GTO」「F40」「F50」「エンツォ・フェラーリ」「ラ フェラーリ」等がそれに当たります。
1984年に登場した「288GTO」は、「308GTB」をベースにグループBのホモロゲーションに沿って製造された特別モデルです。V型8気筒2855ccエンジンにターボを2基装着することで最高出力は400馬力を誇りました。
1987年に創業40周年を記念して登場した「F40」は、翌1988年に死去したエンツォの遺作として特別扱いされることも多いモデルです。
モノコック+サブフレームの車体に、478馬力を発生するV型8気筒2936ccツインターボエンジンを搭載し、カーボンケプラー素材を多用したボディを被せただけ車体は、実用性の欠片もないレーシングカーそのものでした。
1997年に登場した「F50」は創業50周年を記念したモデルです。
角ばったデザインの「F40」に比べると曲線を多用した優雅なデザインに変更され、ある程度の実用性も持たせていましたが、スペックは強力で、V型12気筒4698ccの自然吸気エンジンなどF1の技術を惜しみなく投入されたモデルでした。
2002年には創業55周年記念モデルが登場。車名に創業者の名前「エンツォ・フェラーリ」を使用したモデルでした。
F1マシンを意識したデザインは、ピニンファリーナに在籍する日本人デザイナーが担当し、V型12気筒5998ccの自然吸気エンジンに組み合わされる変速機は、F1マチックと称されたクラッチペダルの無いセミオートマチック方式のトランスミッションでした。
2013年に登場した「ラ・フェラーリ」は、市販フェラーリでは初のハイブリット搭載モデルです。
V型12気筒6262ccの自然吸気エンジンに、F1のKERS(改正システム)を組み合わせることで、システム出力は963馬力を誇りました。
Ferrari 512BB(フェラーリ 512BB)とは

512BBは、1976年に発売されたフェラーリのフラッグシップモデルです。

「365GT4BB」のマイナーチェンジ版ですが、排気ガス規制の影響で低下したパワーを補うため、エンジンの排気量が5リッター(4942cc)と大幅に拡大されました
「512」の名称は5リッターエンジン+12気筒から名付けられました。

「BB」とは、高性能の屋根付きクーペを意味する「 Berlinetta(ベルリネッタ) 」と、水平対向エンジンを意味する「Boxer(ボクサー)」の頭文字を取ったもの。
「BB」をコンセプトに開発が進められましたが、実際に搭載されたエンジンは水平対向エンジンではなくV型エンジンでした。

駆動方式は、エンジンをミッドシップに搭載してリヤタイヤを駆動するMR方式。
世界最速を謳うランボルギーニ・カウンタックに対抗するため開発された「512BB」は、空気抵抗が少ない空力ボディと360馬力を誇る強力なエンジンで、最高速は302km/hとアナウンサーされています。

デザインはピニンファリーナが手掛けたもの。
「365GT4BB」からのマイナーチェンジで、エンジンには大きな変更が加えられましたが、外観デザインはテールランプが丸形3連から丸形2連に変更される等の小変更にとどまりました。

512BBはV型12気筒エンジン最後のキャブレターモデルです。
その後マイナーチェンジされた「512BBi」は、排ガス規制の影響でウェーバー製キャブレターからボッシュ製Kジェトロニックに変更され、最高出力・最高速とも大幅に低下することになりました。
ランボルギーニとのし烈な最高速争いが、意外な形で終止符を打たれた瞬間でした。
Ferrari 512BB(フェラーリ 512BB)YouTube動画
素晴らしい車の映像が楽しめることで有名な 「Petrolicious」。
スタイル。サウンドも。どれを取っても512BBは芸術作品ですね。
銀色の車体が美しい512BB。
軽快な音楽と共にV型12気筒のフェラーリサウンドが楽しめます。
おなじみDavide Cironiによるドライブインプレッションです。
比較的小さなサーキットを使った走行映像が楽しめます。