みんなの薬剤師

医療介護連携勉強会in美濃病院「在宅支援と薬について」の講演

渡辺邦人 美濃市立美濃病院 在宅医療支援センター 医療介護連携勉強会

11月16日に美濃市立美濃病院の在宅医療支援センターが主催する「医療介護連携勉強会」が開催され、メインテーマである「在宅支援と薬について」の講演及び、その後のグループディスカッションでの進行役を務めさせて頂きました。

医療介護連携勉強会はこれまでに何度か開催されていて、勉強会の最後に毎回少しだけ時間を頂き、薬についてのコラム的なネタを参加者の皆さんに提供させて頂いていたのですが、

今回は薬がメインテーマで、しかも新型コロナウイルス感染症が流行し始めてから今日まで勉強会の開催を見合わせていたこともあり、久しぶりに(2年ぶりくらいかな?)地域の多職種の方の前で、しかもいつもより少し長めに話をする機会を得ることが出来ました。

「薬」がメインテーマとなった理由は、過去の勉強会での交流や、以前実施した多職種向けアンケート等で、日常業務における薬の悩みごとやトラブルを何とか解決したいという思いや、薬について色々知りたいといったニーズが参加者から多く寄せられていたからです。

「薬」と「医療・介護」というのは切っても切れない関係で、医療や介護関係の現場では、薬に関わる判断が求められる場面が割と多くあるにも関わらず、そういった場面で必要な基礎的な薬の知識でさえ習得する機会が少ないのが現状です。

しかも昔と比べると医療もどんどん複雑化していて、必要な知識の範囲が広がっている側面もあり、それがまだまだ過渡期である在宅医療ともなると更に複雑難解なのは想像に難しくありません。

そうした現状は、医療事故(いわゆるインシデントやアクシデント)を分析してみても見えてくるものがあって、元々増加傾向にある医療事故ですが、その発生原因を見てみてみると、「薬」が何かしらの形で関わっている事象が約1/4~1/3にも上るという報告もあり、更にそうした事象を深堀りしてみると、「知らなかった」とか「そもそも間違って覚えていた」等、明らかに薬の基礎知識の不足が影響しているものも少なくありません。

もちろんこうしたデータは、数字の取り方や捉え方によって結果が上下するものなので断定はできませんが、仮にそれを「在宅で起こり得るトラブル」に置き換えたとしても、おそらくその傾向に変わりはなく、むしろ「薬が起因となったもの又は関係して発生したトラブル」が占める割合はより高くなる可能性もあるのでは?…と思ったりもします。

逆に言えば、ほんの少し薬の知識がプラスされるだけで解決できる問題や防ぐことが出来たトラブルが、在宅での医療介護にはたくさん潜んでいると言えるかもしれません。

こうした背景もあり、以前から親交が深いここのセンター長とも「いつか薬をメインテーマとした勉強会をやらないとね」「その時は講師を頼むね」とずっと話を温めていたし、現場で実際に困っている医療介護関係者に関われば関わるほど、そのニーズにしっかり応えられる勉強会を開催したいという思いは常に持ち続けていたつもりです。

なので、開催日程が決まり正式に講師の依頼があった2カ月前から、つまり僕としては随分早く当日使用するスライドの作成に取り掛かるといったやる気をみなぎらせていたのですが、実際に開催日が近づきフタを開けてみると、グループディスカッションの関係から講演時間が20分程度しかなかった(少しガッカリ)ので、1時間以上は確実に話せそうなスライドのうち、時間内に紹介できたのは「認知症の人への服薬介助の工夫」と「薬剤師による在宅訪問」だけになってしまいました。

それでも、限られた20分をフル活用して頑張った甲斐があったようで、終了後のアンケートでは、

認知症の勉強が出来てよかった」(薬剤師)

「薬について色々聞くことができた。またこのような機会があるとよい」(介護支援専門員)

「薬のことはまず薬剤師に聞くことが大切。頼りにしています」(看護師)

「具体的な事例についてのアドバイスを頂くことができた」(介護支援専門員)

「薬剤師からの具体的な提案や介入方法が参考になった」(社会福祉士)

等、手ごたえを感じられる意見を頂けたし、

講義時間が短く限られた話題しか話せなかったことについては、

「もう少し内容を聞きたかった」(職種不明)

「時間をかけてもう少し聞きたかった」(介護支援専門員)

「講義の時間が限られているのが残念でした」(職種不明)

「講義の内容をもう少し聞きたかった」(看護師)

「ウンウンとうなづきながら聞くことができました」(看護師)

といった様に、とっても前向きな意見を頂くことができました。

ちなみに今回の勉強会では、普段「在宅支援薬剤師ミーティング」で顔を合わせている地域の薬剤師さんにもお手伝いをお願いして、会場を一層盛り上げることができました。

グループディスカッションでは、各グループに1人ずつ薬剤師を配置するまでには至らなかった(1名足りなかった)ものの、それでも小さな地域でこれだけの薬剤師さんが、しかも平日の昼間に集まって頂いたことには感謝しかありません。

手伝って下さった薬剤師さんも、

「薬の存在がネックになっていることが多いと感じ、介入するきっかけにしたいと思った」(薬剤師)

「特養、在宅での服薬管理の困難さは想像を超える点がある」(薬剤師)

「様々な現場の状況で、薬の”飲めている”と判断する基準が違っていることが新鮮だった」(薬剤師)

「地域スタッフの方が、在宅薬剤管理について日頃困っていることとか、どんな工夫をされているのかについて、具体的なお話が聞けてとても参考になった」(薬剤師)

といった様に色々と刺激を受けたようです。

もちろん僕個人としても、ディスカッションで答えに困るような課題にも直面し「宿題」を持ち帰ったような気分になってるので、できれば次回以降早めの「在宅支援薬剤師ミーティング」で、今回の内容についてしっかりアセスメントを行い、今後の地域連携及び在宅薬剤支援の質向上に繋がるようなまとめ方をしておこうと考えているところです。

もちろん2回目の開催にも期待しながら…

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