みんなの薬剤師

第4回みの在宅支援薬剤師ミーティング

美濃在宅支援薬剤師ミーティング

9月9日に「第4回みの在宅支援薬剤師ミーティング」が開催されました。

訪問看護師をゲストにお迎えしてのディスカッションが好評だった前回を継承する形で、今回は管理栄養士をお招きしての開催です。

近年の医療現場は「栄養管理」の重要性と可能性に注目が集まっており、10年ほど前の診療報酬改定では「栄養サポートチーム加算」が新設され、更にその2年後には栄養管理が入院基本料算定の必須要件にもなっています。

そしてその中心的な存在である管理栄養士は、最近は調剤薬局に常駐して僕たち薬剤師と一緒に街の健康ステーションとしての役割を担ったり、在宅訪問業務にも同行して低栄養の改善を行ったりと、年々薬剤師との関わりが深くなっているようにも思います。

そんな背景もあり、個人的に一度は薬剤師と管理栄養士が交流できる機会を設けたいと思っていたところだったので、とても良いタイミングで開催することができました。

今回は病院勤務の管理栄養士から、管理栄養士が普段どのような仕事をしていて、どのように患者さんと接しているのか?といったお話を聞くことから始まったのですが、

ディスカッションを重ねていくうちに、実際に今抱えている患者さんに対しての症例検討をしているような雰囲気になっていき、最終的にはミーティングの場がまるで「連携会議」のようになっていました。

実際その内容を元に翌日、病院の薬剤師が医師・ST・病棟看護師・訪問看護師・透析看護師に向けて動きをかけたことからも、いかに建設的な話し合いが行われていたかということが分かって頂けるかと思います。

そして、盛り上がったディスカッションの後には、「とろみ剤で服薬ゼリーを作ってみよう!」というテーマで実践的な研修も行いました。

これをテーマに掲げた理由は、僕が以前介入した事例の一つに、嚥下機能が低下してきた患者さんに対して「服薬ゼリー」の代用品として「とろみ剤」を紹介したという経験があったからで、その時に調べ上げた知識やそこに至るまでの過程が、これから在宅医療に携わる薬剤師にきっと役立つだろうと思ったからです。

この事例では、当初ご家族に「服薬ゼリー」を紹介するつもりでいたのですが、実際に調べてみると思ったよりもコストがかかることが分かりました。

在宅医療ではコスト面を気にされる患者さんやご家族も多いので、何とかならないものかと頭を悩ませていたのですが、管理栄養士さんに相談してみたところ、「とろみ剤を濃くすることで服薬ゼリーとほぼ変わらないモノを作ることが出来る」ということをアドバイスされ、

それならばと改めて調べてみると、実はとろみ剤と服薬ゼリーの成分はそれ程違いがないことが分かり、また実際に濃い目のとろみ剤を作ってみると、しっかり代用できることを確認することができました。

もちろん、元々固形化されている服薬ゼリーの方が手軽ですが、「あらかじめペットボトルなどに作り置きしておく」といった工夫次第では、とろみ剤でもそれほど負担にはならず、何より安価で手に入りやすいというメリットが大きいです。

結局この事例では、ご家族は服薬ゼリーの方を選択されたのですが、一連の流れを振り返ってみた時、このように多職種が関わり知恵を出し合うことや、問題解決のために時間をかけて考え抜くことの大切さを実感したのも事実です。

今回の実践的な研修を通して、こうしたことも伝えたいと思っていたのですが、参加した薬剤師さんに感想を聞いてみたところ、

「職種が違うとやっぱり目線が違いますね」

とか、

「ほんとにとろみ剤が服薬ゼリーみたいになるんですね。こういった発想に至ることがすごいです」

といった声が聞かれたことは本当に嬉しく思いました。

そしてミーティングの最後に締めの言葉として、「薬剤師と管理栄養士はとても相性が良い」というお話をさせて頂きました。

これは、今回管理栄養士をお招きして開催するにあたり、色々調べていく中で僕が確信したことの一つです。

僕たち薬剤師が取り扱うのは「薬」、そして管理栄養士さんが取り扱うのは「食」という違いはあるのですが、そもそもその境界線の部分は非常に曖昧で、

漢方でいえば、野菜の中には漢方上は生薬そのものであるものもありますし、食品と名の付く「特定保健用食品(トクホ)」や「機能性表示食品」には、粉末や錠剤やカプセルなど医薬品と似た形態のものもあり、一般の人は薬と同じような感覚で飲んだりしています。

薬物動態学的にも、食も薬も同じ口から入れるもので、吸収・分布・代謝・排泄の過程があり、お互いが影響することがありますし、

薬理学的にも、お互いの成分が影響しあい、拮抗的に働いたりすることもあれば、その逆もあったりと、薬と食というのはとても関係が深く、とても良く似ているモノなんです。

また、患者さんと薬剤師・管理栄養士との関係性に目を向けてみても、「指導」という形で患者にアプローチをして改善に導いていくといった役割、つまり目的や手段といったこともとても良く似ていることが分かります。

このように「モノ」「ヒト」「コト」といったことが似ているということは、当然連携することでお互いが得られるもの、つまりメリットが大きいということを意味していて、結果的に患者さんに還元できることも多いということを意味すると思います。

今回のミーティングがきっかけとなり、相性が良い職種同士が今まで以上に近い存在として意識的に連携していくことができれば、きっと良い形で実りが得られるだろうと思うし、そうした期待を抱かせるようなミーティングになったことを嬉しく思います。

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