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薬剤師ボランティア

電子カルテをメンテナンスしていると、普及が進まない理由が良く解ります

本日はお世話になっている病院(120床程の小さな地方自治体病院)で、電子カルテ導入のお手伝いをしています。

電子カルテとは、従来紙媒体で行われていた診療記録や各種オーダー依頼等の業務を、丸ごと電子システムに置き換えたもので、日本で普及し始めたのは確か2000年頃だったと思います。

どの世界でも良くあることですが、カルテの電子化も、厚生労働省から「無理やりやらされる感」が強い政策だったので、現場的には戸惑いも多かったことも記憶しています。

当然この頃の電子カルテはシステム自体も成熟しておらず、パソコンの性能や通信速度も不足していて、カルテが開くまでに時間がかかったり急にシャットダウンしたりと”使えない”ものばかりでした。

大病院に比べると小病院での電子カルテ普及は進んでいない
★大病院に比べると小病院での電子カルテ普及は進んでいない

こうした背景もあり、当時の厚生労働省が掲げた普及目標には中々届かない時期が続いていましたが、ここにきてやっと大きな病院(400床以上)の普及率が8割を超えてきたようです。

ただ今回お手伝いしている規模の病院(200床未満)では、未だ4割に届いていないのが現状です。小さい病院で普及が進まない一番の理由はコスト問題ですが、同じくらい「導入時の高いハードル」と「多機能化による使いにくさ」が障壁となっているように思います。

我が国の人口ピラミッド
医療でも人材不足になって当然か
★我が国の人口ピラミッド
★医療でも人材不足になって当然か

一つ目の理由である「導入時の高いハードル」は、いわば人手不足からくるものです。

小さな病院では、そもそも専門のシステム担当者を置く余裕はないので、院内でパソコン操作を得意とするスタッフが兼任することになりますが、そもそもそうした人材は少なく、場合によっては一人も見つからないこともあります。

選ばれたスタッフも当然ながら通常業務にプラスしての作業なので、特に多くの作業が山積みとなる初期導入の際には業務の負荷と責任が集中することになります。もちろんこうした負担は導入後も続くことになり、当然代わりもいません。

また地方の小さな病院では、スタッフ全体の年齢層も高くなりがちで、そもそもパソコンの操作自体が怪しいスタッフも少なくありません。そうなると、医療従事者業務の3/4を占めると言われる「記録業務」に時間的ロスも生じてきます。

紙カルテでは可能な「融通を利かせること」や「適度に手を抜くこと」が、厳密さを求められる電子カルテでは不可能に近いので、昨今の「働き方改革」による残業制限等も考えると、導入へのハードルが益々高く感じられるようになったと考える経営者も少なくないと想像します。

二つ目の理由 である「多機能化による使いにくさ」 は、電子カルテそのもののコンセプトの問題です。

電子カルテのコンセプト設定はどうしても大きな病院に偏りがちで、そのコンセプトが大きな病院に偏れば偏るほど、小さな病院のコンセプトからは外れたシステムが出来上がることになります。

例えば、大きな病院ではどうしてもスペシャリスト的な業務が多くなるため、それに伴い電子カルテもどんどん多機能化が求められますが、小さな病院では一人のスタッフが多くの仕事を受け持つジェネラリスト的な業務形態になるため、多機能化されても使うことはほぼありません。

大きな病院では「痒い所に手が届く機能」が、小さな病院ではそれが逆に「動線悪さ」に繋がり、結局「使いにくい」という印象に収束してしまうのです。

このように電子カルテについては未だ賛否両論ありますが、僕自身は電子カルテ推進派で、初めて電子カルテに触れた時の「医師の汚い字からの解放感」は格別だったし、「院内のどこにいても患者情報にアクセスできること」は病院薬剤師としては革命的な出来事でした。

小さな病院ではなかなか進まない電子化ですが、情報は電子化して共有してこそ患者さんに利益を還元できると考えていています。、

そして、今後の医療が地域包括ケアシステムを中心に行われることが明確な以上、地方の小さな病院ほど電子化が必須になるのではないかとさえ感じています。


なぜなら、地域包括ケアシステムでは、情報の輪を院外にも広げ多職種連携による共有が不可欠であり、その情報の中心的存在であるカルテ情報が電子化されないことには、システムが成り立たないと思うからです。

色々と理想論ばかり並べましたが、「じゃあ、地方の小さな病院にはどんな電子カルテが必要なんだ?」と言われたら、僕の答えは「らくらく電カル」です。

情報共有に特化したカルテ機能に、簡易なオーダリングシステム、そしてシンプルなインターフェイス...つまり「らくらくホン」の電子カルテバージョンです。

採算が取れない? いやいや、らくらくホンの大ヒットは知ってますよね?

だって富士通だし...

価格は多少高くてもOKです。その代わり現場の意見をちゃんと聞くこと。そしてしっかりコンセプトに取り入れること。

ちなみに紙運用の方が効率が良い業務は、紙運用を前提としてシステムを設計したいところ。そもそも全てを電子化しようとするから無理があるのであって、紙の方が優れていることも多いのだから。

でもそんな電子カルテはきっと専門家から否定されて、「渡辺~ アウト~!」って言われてしまうんだろうな...

「医療は会議室で起きてるんじゃない 現場で起きてるんだよ」

おしまい

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